■不動産売買契約書作成の重要性
不動産は資産価値が高く、生活の拠点になるなど重要な財産であり、売買代金が高額になります。契約がうまく成立しなかった場合はトラブルに発展する可能性が高いため、トラブルを防止するには、不動産売買契約書の作成が重要となります。
■不動産売買契約書の一般的な規定
不動産売買契約書の一般的な規定は以下の通りです。
(1)売買の目的物及び売買代金
(2)手付金
(3)売買代金の支払時期・方法など
(4)売買対象面積・測量・代金精算
(5)境界の明示
(6)不動産の所有権の移転時期・引き渡しの時期
(7)抵当権や賃借権などの抹消
(8)所有権移転登記など
(9)引き渡し完了前の滅失・毀損が生じた場合の処理方法
(10)公租公課等の分担
(11)契約不適合責任
(12)設備の引き渡し・修復
(13)手付解除
(14)契約違反による解除・違約金
特に問題となりやすいのが、(2)手付金((13)手付解除)、(5)境界の明示、(11)契約不適合責任、(14)契約違反による解除・違約金に関する規定です。以下で詳しく見ていきましょう。
●(2)手付金((13)手付解除)
手付とは、契約成立の際、当事者の一方が相手方に交付する金銭等を指しますが、この性質をめぐって様々な見方があります。具体的には、契約成立の証拠としての証約手付、代金の一部前払いである内金または手金としての手付、損害賠償額の予定としての手付、違約罰としての違約手付(さらに損害賠償額の請求ができる)、解除権留保の対価としての解約手付などです。実務上、最も多いのは解約手付であり、契約書等で特段の規定がなければ解約手付と推定されます(民法557条1項参照)。
証約手付として契約が成立した証拠というだけの目的で手付が授受され、解約手付の性質を持たせたくないときは、その旨をはっきりさせる必要があります。
なお、手付金は売買代金額の1割から2割程度が一般的です。
●(5)境界の明示
土地や戸建ての不動産取引の場合は、売主は買主に隣地との土地の境界を現地で明示することを行う必要があり、その旨の規定を設ける必要があります。
土地の境界線は、目に見えるものではなく、境界を示す手段として、自然の道などの地形や、境目に石材を埋め込むなどの方法が利用されます。この境界を示すための標識を「境界標」といいます。境界標がない場合は、測量図や登記所にある地積図・公図などを利用して境界線を判断していくことになります。その資料を基に隣地所有者と協議して境界を確定するのが一般的です。
不動産売買後、隣地所有者との間で境界をめぐるトラブルを発生させないためにも、契約段階で契約当事者間で確認しておく必要があります。中には10年ないし20年の月日がたち、時効取得が成立する区域が生じている場合もあり、必ずしも測量図や地積図・公図が正確とは限りません。隣地所有者との間で協議が成立せず境界が定まらない場合は、筆界特定手続きを申請するか、筆界確定訴訟を提起することになります。土地の売買契約を締結する際は、十分に調査・確認をするようにしましょう。
また建物が越境しているケースなど越境物がある場合は、それを買主が引き継ぐことになるか、売主が引き渡し時までに解消するかを特約で明示する必要があります。
●(11)契約不適合責任
従来は目的物である財産権(所有権等)に何らかの欠陥がある場合、その目的物には「瑕疵」があるとして「瑕疵担保責任」(売買契約以前に発見できなかった瑕疵に対する売主の責任)という規定が売買契約書内に設けられていました。現在は、近年の民法改正(2020年4月1日施行)により、「瑕疵」という概念に代わり「目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの」(改正民法562条1項等)や「移転した権利が契約の内容に適合しないもの」(改正民法565条)といった契約不適合の概念が導入されました。売主は、①物の種類・品質・数量に関して契約の内容に適合した物を引き渡すべき義務、及び②契約の内容に適合した権利を供与すべき義務という2つの義務を負うことが明示され、これらの2つの義務のいずれかまたは両方に違反すると「契約不適合」ということになります。
契約不適合がある場合、買主は追完請求(修補請求または代替品の引き渡し請求)、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除などを行うことができます(改正民法562条~564条)。ただし、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは基本的に上記の請求ができなくなります(改正民法566条本文。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは期間経過後も上記請求ができる)。契約書内ではこの請求できる期間を延長するかどうかを含め明示するようにしましょう。
なお、取引対象の不動産が新築住宅の場合は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の適用により、上記の追完請求や代金減額請求などを行える期間の延長がなされています(同法95条1項、97条参照)。
●(14)契約違反による解除・違約金
不動産売買契約当事者(売主・買主)のいずれかに重大な契約違反があったときは、相手方はその売買契約を解除できる旨を契約書内に明記しましょう。規定を設けなくとも、民法では催告解除や無催告解除の規定がありますが(改正民法564条、541条、542条)、「○〇において本契約条項の一つにでも違反した場合は、なんらの催告の手続きを要せず本契約を解除できる」などの無催告解除の規定を置くのが一般的です。また契約解除後の違約金の範囲(例えば、手付金を違約金として取得できるなど)の規定も明記しておきましょう。
■作成時の注意点
不動産の種類は千差万別で、建物や土地といった不動産は一つとして同じものはありません。不動産取引の際は、このような不動産の個別性や事案の個別性が重視され、目的物の対象や売買代金などが変動します。契約書内には必ず上記のような個別性を反映させた内容で作成するようにしましょう。
冒頭でも述べましたが、不動産をめぐるトラブルが生じると大きな不利益を被ることになるため、不動産の売買契約書を作成する際や、契約を締結する際は弁護士などの法律専門家によるリーガルチェックを受けることをおすすめします。
中嶋法律事務所は、新宿区、文京区、中央区、千代田区、江東区、渋谷区を中心に、不動産売買に関するご相談を承ります。当職は企業法務(会社経営一般や契約レビュー、ビジネスモデルの構築、危機管理など)、医療機関、社会福祉施設経営一般、不動産などさまざまなご相談を承っており、不動産売買契約書の作成に関するサポートも行なっております。
不動産売買でお悩みの際は、当職までご相談ください。